「知財のおしごと」知財部座談会

- 1."知財のおしごと"との馴れ初め(座談会メンバープロフィール)
- 2. 権利化が私たちの腕の見せ所
- 3. 知財のプロが育まれる組織
- 4. 国内外のスペシャリストたちとも日常的にやり取り
- 5. 京都と横浜が主な拠点のワークライフバランスが充実した職場
4. 国内外のスペシャリストたちとも日常的にやり取り
- 辻:
- 平林さんは契約関係の業務も担当されていますが、どんな点を大事にされていますか?
- 平林:
- 例えばライセンス契約では、いかにしてお互いに利のある所で折り合いをつけられるか、というところになりますかね。マクセルが保有している知財の価値を先方にもご理解いただきながら、さまざまな条件も考慮したうえで粘り強く着地点を探していきます。
- 辻:
- 粘り強く、ですか。そう簡単に折り合いはつかなそうですね。
- 平林:
- そうですね、止むを得ず訴訟というかたちをとることもあります。ただ、それで双方が納得して和解できるのであれば解決に向けた一つの選択肢と捉えています。
- 辻:
- 訴訟となるといろいろと大変そうですね。平林さんの担当分野では結果的に米国での訴訟が多いですよね。
- 平林:
- はい、実際に訴訟になるととても大変で、米国の訴訟弁護士の方たちとしっかりと連携しながら慎重にことを進めていきます。大変ではありますが、訴訟手続きを経験することはとても勉強になりますし、弁護士の方たちとのやり取りでは得意な英語を活かせますので、私としてはとてもやりがいを感じながら仕事をさせてもらっています。
- 辻:
- 海外出張も多いですか?
- 平林:
- コロナ禍が明けてからは、だいたい年7~8回ぐらいですかね。実は、初めて一緒に飲みに行ったのが海外出張の時だったという知財部の方もいますね。出張はもちろん仕事なのですが、私としてはそういう意味でも出張を楽しんでいます。
- 辻:
- そういう訴訟関係の業務は、やはり平林さんのように英語をペラペラに話せる必要がありますか?
- 平林:
- 英語が話せる方が当然ベターですが、日本から一緒に海外出張に行くメンバーには、そこまで英語が得意ではない人もいます。現地には日本出身の弁護士もいるので、最初は日本語が話せる弁護士を頼りつつ、現地で英語でのコミュニケーションスキルを上げていく人もいます。いずれにしても、私の部門は、海外出張での実務経験を重視していて、ベテランのみならず、これから経験を積むべきメンバーも積極的に海外出張の機会があります。みんな仕事も現地の弁護士との交流も楽しんでいますよ。
- 辻:
- 渡辺さんは標準技術関係の業務を中心にされているということですが、標準技術とそれ以外では目線が違うように感じます。標準技術案件の権利化のときに大事にされていることはありますか?
- 渡辺:
- 発明者と連携して規格書をきちんと理解したうえで、自社の先行発明を適切に標準技術特許として成立させるところがそれらの権利化では重要になります。そのためには、標準技術の規格書を理解することが何より大事なんですが、規格書は専門用語が多く相当に難解な内容ですので、これを読み込むのは非常に骨が折れます。
- 辻:
- 発明者のみならず知財担当者も規格書のことをよく知っている必要があるということですね。
- 渡辺:
- そのとおりです。600ページある規格書が何十もあって、それを読み込んでいきます。
- 辻:
- ざっと目を通すだけでも1日かかりそうですね。
- 平林:
- そんな規格書を理解できるという所はやはり渡辺さんの強みですか?
- 渡辺:
- そうですね。元々製品設計の仕事をしていて技術仕様書は見慣れていましたので、規格書に記載されているブロック図などの記載も、技術内容は違いますが応用して理解していけるのが自分の強みだと思います。
その意味でも標準技術関係の仕事は設計畑出身の自分としてはとてもやりがいを感じています。あと、権利化した標準技術特許をパテントプール※に申請する際には、法律のプロフェッショナルである社外の弁護士・弁理士と標準必須にかかる評価・判定のやり取りをするわけですが、そういう方たちとのやり取りの経験というものは自身の知財畑のスキルをアップしていくのにとても役立っています。
※パテントプール(patent pool):1つもしくはそれ以上の特許(パテント)を複数の特許権ライセンスを使用する際に必要な特許権を集中し、一括してライセンス契約を結ぶ仕組み