マクセル 知財・イノベーション本部特別企画 知財のおしごと 知財部門 座談会

2. 権利化が私たちの腕の見せ所

  辻:
特許の技術担当をしていると事業部の人とやりとりすることが多いと思いますが、関係性はどうでしょう。在籍している京都事業所と横浜事業所でも環境が違うと思いますが、それぞれどういう関わり方をしていますか?
  井上:
入社当初はコロナ禍だったこともあり対面で話すことは少なかったのですが、電話やメールでは伝わりにくい部分もあるのでできるだけ発明者がいる席へ行き、詳しく説明をしてもらったり、また、メールよりは電話で伺うようにしてコミュニケーションをとっていました。
  辻:
渡辺さん自身は技術者だったことが活かせていますか?
  渡辺:
元々設計開発をやっていましたし、今担当している著作権保護技術や映像符号化技術は近いところがあるので発明は理解しやすいと感じています。それでもわからない部分はあるので発明者に聞く必要がありますが、横浜事業所では発明者が同じフロアにいるので話は聞きやすいです。

 
座談会

  辻:
京都事業所は、敷地も広く建屋も多いので、打ち合わせのための移動も大変では?
山本さんは京都で働いていますが、一度事業部の建屋へ行くとなかなか帰ってきませんよね。
  山本:
発明の創生やクリアランスに関することなど、一度にまとめて相談することが多いです。
クリアランスでは、何千件とあるリストを1件ずつ評価して、抜けや漏れがないようにしています。
  辻:
権利化のときには、どういったことに気を遣いますか?
  山本:
新たに発明された技術であることを審査官に理解いただくために、公知技術との違いを明確にしていく点ですね。違いを出そうと多くのことを主張してしまうと権利範囲が狭くなってしまうので、かなり気を遣います。それと、知財担当者目線からは、請求項にこういう限定を追加すれば権利化の可能性が高いけれども、自社製品の実施の範囲から外れてしまうような場合があります。そのときは発明者と相談しながら、違う観点の対応案をなんとか考え出して、自社製品をカバーできるように対応しています。

 
座談会

  辻:
発明者とのやり取りで苦労していることはありますか?
  山本:
発明者は、出願した発明は絶対に権利にしたいという強い気持ちがありますよね。出願後の審査対応のときに、拒絶理由の根拠として引用された文献を説明しても、なかなか対応案に納得してもらえないことが多いです。その場合は、詳細な部分まで丁寧に説明するようにしています。
  平林:
真剣な者同士の話し合いですね。
  山本:
発明者が汗水を流して作った努力の結晶ですからね。
  辻:
その結晶を私たちの手腕でダイヤモンドにできるという魅力もありますよね。無効審判にも耐えられる強い特許発明にすることが我々の腕の見せ所でもあります。
  井上:
出願時には明細書にどれだけ特徴を入れてブラッシュアップできるか...。
発明者自身が上手く言葉や図面に落とし込めていない優れたアイデアをいかに引き出し、漏れなく明細書に盛り込めるかを意識しています。
  辻:
知財側のインタビュー力がいりますよね。自分が技術をわかっていないと話を引き出せないので...。
私も若い頃よりは経験を積み、引き出せるようになってきました。ただ、経験年数関係なくそういった
センスがある人もいるんですよね。

 

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