株式会社ニコン
インダストリアルソリューションズ事業部
開発・技術統括部
第一開発・技術部 第四開発課
阿部 桂 様
電気設計全体の取りまとめ、
お客様への製品提案を担当。
株式会社ニコン
インダストリアルソリューションズ事業部
開発・技術統括部
第一開発・技術部 第四開発課
常盤 圭佑 様
技術窓口として、
製品の詳細検討を担当。
マクセル株式会社
営業統括本部
国内営業部営業第1課
課長
遠山 功一
スケジュール・コスト管理、ビジネス拡大に向けた施策策定を主導。
マクセル株式会社
新事業統括本部
ビジネス開発部 企画課
佐藤 優太
技術窓口を担当し、開発設計、量産の立ち上げにも従事。
遠山:ニコン様には以前より耐熱コイン形リチウム電池を採用いただき、デジタルカメラ部門ともお取引がありました。
阿部:2019年に、M700MFAの前身となる製品を開発する際に、マクセル様の耐熱コイン形リチウム電池を採用した縁もあり、今回も早い段階からやり取りさせていただきました。
常盤:エンコーダの仕様書の作成にあたっては、2022年の冬から検討を進めました。エンコーダにはメンテナンスフリーとするトレンドがあり、産業用ロボットの外側にあるバッテリーを外して電池交換の手間をなくしたいというニーズに対し、ニコンは電池をエンコーダの基板上に搭載することで解決を図りました。耐環境性、広い温度範囲、長寿命、安全性という条件を満たし、サイズの小さいマクセル様の全固体電池がフィットしました。
阿部:技術者同士で話す機会が多くあり、全固体電池の特性を教えていただきました。ニコンが求める仕様に対し、セラミックパッケージを採用したリフロー実装をご提案いただき、ニコン独自のメンテナンスフリーのエンコーダを実現できました。
遠山:営業も設計も本当に良いコミュニケーションを持つことができ、お互いの状況を把握しながらプロジェクトを進めることができました。綿密な打ち合わせを通じてお互いのハードルをクリアし、非常に厳しい環境下で使われる製品を実現できて、うれしく思います。
佐藤:過去マクセル製品を採用いただいたこともあり、電池に対して一定のご理解がありましたので、意思疎通を図りやすかったです。また、マクセルは、社会課題を解決する方針のもとで全固体電池の開発を進めており、ニコン様が目指すメンテナンスフリーと同じ方向性なので、スムーズに開発を進めることができました。
佐藤:全固体電池は、可燃性物質が含まれないので発火・破裂のリスクがないという「高い安全性」、電解質が固体であることにより電解液で起こる凍結や蒸発が発生しない「広い温度範囲」、正極/負極が同一面にあり基板に実装しやすい「表面実装性」、そして「長寿命」という4つの特徴があり、エンコーダの使われる環境や直面する課題に適していました。
常盤:メンテナンスフリーのエンコーダを作ろうとするとどうしてもサイズが大きくなってしまうのですが、マクセル様の全固体電池は小型という特徴もあり、他にはない薄さの製品を開発することができました。
阿部:充電についてはエンコーダのメイン電源が入ると自動的に充電が始まる方式としました。常に満充電状態に近い電池としては過酷な環境ですが、ニコンが求める長寿命化を実現していただきました。
また、お客様への提案に際しては、提案の仕方や各種データのグラフの見せ方などについても相談させていただき、お客様に新しい技術の電池ながら信頼性が高いことを伝えることができました。
常盤:今回、全固体電池を初めて採用するにあたっては、充電による劣化度などパラメーターが多くあり複雑でしたが、開発の背景や使用環境などを深く理解していただき、お互いの意図を細かく確認しながら進められ、安心感がありました。
阿部:会社は違いますが、お互いに新しい世界を広げたいという想いを持って、同じチームという雰囲気で進めることができました。電池の特性に関する考え方が複雑で、エンコーダの仕様に落とし込むのに苦労しましたが、両社でワーストケースまで踏み込んで検討を重ねたことは良かったと思います。
佐藤:一緒に課題に立ち向かうチームとして、密に連携し、疑問点はすぐに聞けるような関係を構築することができました。「105℃ 10年寿命」や「エンコーダ仕様決定に必要な電池データ取得」などニコン様からのご要求を通じて、我々もFA業界に必要な電池特性を理解し、仕様に落とし込むことで製品化を迎えることができました。
遠山:マクセルのFA業界への参入は初めてに近いのですが、エンコーダのトップメーカーであるニコン様と一緒に取り組み、この業界の難しさを勉強させていただいたことは大きな糧となりました。
常盤:2023年11月に国際ロボット展で製品を展示しましたが、やはり全固体電池を使った製品が実用化されていることへのインパクトがあったようで、国内外の多くのお客様から問い合わせをいただいています。お客さまにはサンプルを評価していただいている段階で、2025年春からの量産を予定しています。MAR-700MFAは温度範囲が広く、コンパクトなので、今後他社製品からの置き換えも期待できます。今のところ電池内蔵のエンコーダはニコンしか製造・販売していません。M700MFAがメンテナンスフリーの主流となれば、全固体電池の需要はますます増えると思います。
佐藤:今後は、広く市場を開拓することが重要になります。ニコン様との強固な関係を継続して、一緒に取り組んでいければと思います。
遠山:FA業界のほか、センサー関連機器や、バックアップで現在はコイン電池を使っている機器など、幅広い分野から問い合わせをいただいており、各部品メーカーと一緒になって開拓を進めています。量産に向けては、京都事業所での設備導入は完了しており、今年度以降ニコン様への納入準備を進めていきます。キーデバイスとして全固体電池が採用されることで、メンテナンスフリーなどSDGsの観点から新たな価値を付加できることをアピールしていきたいと思います。