高信頼の小型電池領域において、規模と先進性の両面で
グローバルNo.1をめざします

代表取締役 取締役社長
中村 啓次

社長メッセージ
■中期経営計画MEX26 2年目の振り返り

 MEX26 (Maximum Excellence 2026) の2年目となる2025年度の売上高は1,294億円、営業利益は79億円となり、当初の計画値を下回る結果となりました。また、2026年度につきましても売上高1,430億円、営業利益100億円となる見通しで、MEX26の目標に届いていません。ステークホルダーの皆様のご期待に応えられなかったことを、重く受け止めています。
 2025年度を振り返ると、収益計画未達の一つ目の大きな要因は半導体DMS事業の不調ですが、これは、計画策定時には市況の回復を見込んでいたものの、実際には当社の主力である汎用タイプを中心とする半導体製造装置の出荷台数が期初想定から大きく乖離し、大幅な減収となったものです。今後は、新しい経営体制にて顧客フォーキャスト精査や市場環境情報の収集をこれまで以上に強化してまいります。 収益計画未達の二つ目の大きな要因は、医療機器や時計用途で使用されるマイクロ電池の主材料である銀の価格が、想定を超えて大きく高騰したことです。この影響は、当社だけの努力で吸収できる範囲を超えた水準であり、お客様のご理解をいただきながら売価への反映を進めてまいりましたが、今般の貴金属価格の急変動を受け、コストの売価反映時期をこれまで以上に短縮し、期間収益への影響を最小化してまいります。
 一方で、成長事業については、医療機器用一次電池やTPMS用耐熱コイン形リチウム電池、塗布型セパレータなどの事業は、概ね当初のシナリオどおり順調に進捗し、意図して伸ばしている事業は着実に成果を出しています。
 加えて、売上拡大に苦戦をしていたEF2(電鋳製品)事業は、業績や今後の市場動向を踏まえ、パートナー企業に事業を譲渡する一方、村田製作所様から一次電池事業を譲受するなど、今後、マクセルを大きく成長させる高信頼の小型電池領域でのフロントランナーをめざす戦略に沿ったポートフォリオ改革は大きく進展しました。

■コーポレートバイライン「Micro batteries. Maximum impact.」を新たに制定

 マクセルはこれまで、小型電池を中心とする「見えないところで社会を支える技術」により、精密・高信頼性が求められる多様な産業へ価値を提供してきました。しかしながら、ステークホルダーの皆様においてはカセットテープやビデオテープのイメージがまだ残っており、現在当社が力を入れているBtoB事業における実際の取り組みとの間に乖離がありました。
 そこで今回、マクセルは何の会社であるかを明確に示すバイライン「Micro batteries. Maximum impact.」を新たに制定しました。「マイクロサイズの電池が、世界の産業を支える大きなインパクトを生む」──これは、電池を成長のメインドライバーとした価値提供企業への変革を対外的に宣言するものです。
 なお、このコーポレートバイラインは電池事業だけを意味するものではありません。当社の機能性部材料や光学・システム事業も、小さな部品・材料がお客様の製品に大きな価値を与えるという点で、同じコンセプトに沿っています。全事業が「Maximum impact」の思想を共有し、それぞれの領域で存在感を高めていきます。
 電池は創業製品であると同時に、社名の由来でもあり、今後も技術革新とともに新たなニーズが生まれ続ける分野です。マクセルは、全固体電池を含む「高信頼の小型電池領域」において、規模と先進性の両面でグローバルNo.1となることをめざします。

■小型電池の成長戦略を推進

 小型電池領域でのグローバルシェア拡大に向けては、高信頼の一次電池と、全固体電池を中心に強化を図っていきます。

一次電池:M&Aによる規模拡大と競争力強化
 2026年3月に村田製作所様から一次電池事業を譲り受け、マクセルサクラ株式会社を設立しました。これにより小型電池の生産拠点は、兵庫県小野市の小野事業所に、福島県郡山市のマクセルサクラが加わりました。酸化銀電池に強みを持つ郡山事業所と、コイン形や円筒形の二酸化マンガンリチウム電池に強みを持つ小野事業所の2拠点で生産効率を最大化させる計画です。
 シナジーの創出は短期・中長期の二段階で進めます。短期的には、当社がフル生産でも需要に対応しきれていない医療機器用電池などについて、郡山事業所の生産キャパシティを活用し、供給力を強化します。中長期的には、エンジニア間の技術交流を通じて製品開発力を底上げし、次期中期経営計画でのビッグステップにつなげます。2026年度はエネルギーセグメントにおいて売上高530億円、営業利益率5.8%を達成し、その先の大きな成長を実現する計画です。

全固体電池:量産フェーズへの移行と市場拡大
 全固体電池については、2024年度下期から本格的な量産フェーズに入りました。従来の電池では使用できなかった環境下での用途を中心に電池単体での販売に取り組むことに加え、現在は既存のロボットやPLC*などにおいて、バックアップ用途で使われている一次電池の全固体電池への置き換えを促進すべく、周辺回路を一体化した電源モジュールの提供も進めており、手応えを感じています。
 2026年度の全固体電池の売上高は数億円規模にとどまりますが、これは「量産実績の蓄積」と「顧客基盤の構築」を最優先とする現段階の位置づけに沿ったものです。FA向け汎用モジュールは2026年6月に開発完了しており、今後は大型化を開発の中心テーマとして、バックアップ用途から主電源用途への展開をめざします。次期中期経営計画での本格的な収益貢献に向けて、着実に販売・生産を拡大していきます。
* Programmable Logic Controller
(プログラマブル・ロジック・コントローラ):あらかじめ設定したプログラムに従って、機械や設備を自動制御する工業用コンピュータ

営業利益推移  アクションプラン KPI  エネルギーセグメントの小型電池フロントランナー戦略
■事業ポートフォリオの強化に向けて

 事業ポートフォリオ改革については、安定した成長の実現に向けて財務規律を徹底し、経営資源の最適配分を行っていきます。
 当社はMEX26期間で、角形リチウムイオン電池の生産終了、EF2事業の譲渡という二つの撤退判断を行いました。これらは単なる不採算事業の整理ではなく、小型電池領域に経営資源を集中するための意図的な選択です。撤退によって生まれたリソースを成長事業に再配分し、投資の「メリハリ」を強化しています。
 機能性部材料については、建築・建材用のブチルテープの増産に向けて、小淵沢事業所に20億円超の投資を行いました。高気密住宅など高付加価値用途に使われる製品で、2026年度以降の売上・収益に貢献することを計画しています。粘着テープ事業は、高付加価値領域は成長しているものの汎用品は価格競争が激しく、収益性に課題があるため、高付加価値領域へシフトするとともに原価低減や販売強化に向けたプロジェクトを推進しています。
 光学レンズ事業においては、マクセルフロンティア株式会社に集約し、設計から製造・販売までを一貫して担う体制としました。技術シナジーの創出、開発スピードの加速、事業効率化を図っていきます。
 新事業統括本部で開発を進めているEMC対策部材は、磁性粉を使ったフィルムなどにより電波を吸収する製品で、もともとカセットテープなどに使っていた技術の応用です。通信機器の増加に伴いデータ通信量が急増し、通信速度向上のために高周波化が進んだことにより電波干渉の問題が増えており、機器が外部から影響を受けないこと、ほかの機器に影響を与えないことの両面を確保するための電波遮蔽、ノイズ対策のニーズが高まっています。お客様の最終商品に向けたサンプルの出荷を2026年4月に開始し、既存設備の活用で初期投資を抑えながら、早期の製品化を図っています。

■成長の加速へ、M&Aや提携を積極的に実行

 成長の加速に向けては、M&Aや提携、共同開発による成長機会の探索にも積極的に取り組んでいきます。
 その一環として、2026年3月、ベンチャーキャピタル日本大手のジャフコ グループ株式会社 (JAFCO) が運用するファンドに出資しました。同社が出資するスタートアップ企業と協業し、当社にはない技術を取り込み、技術開発の幅を広げていきます。既に技術部隊が数社とコンタクトを取り始めています。
 成長の加速に向けては、MEX26期間中に約350億円の成長投資を計画し、特にエネルギーセグメントへ集中配分しています。

「財務・人事担当役員メッセージ」
投資と株主還元の両立に向けた財務戦略の詳細について
 参照

President
■経営基盤、ガバナンスの強化に向けて

 新たに当社グループとなったマクセルサクラ株式会社については、MVVSSを共有し、同じゴールに向かって歩んでいけるように融合を図っていきます。従業員の若さと組織の活力を感じており、人財面でのシナジーも大きいと考えています。
 当社グループの売上高の半分を占める海外市場においても、体制の強化を図っていきます。お客様の困りごとを把握し解決していくには、最前線の販売拠点や生産拠点で現地の関係者とコミュニケーションを取ることが重要であり、海外拠点は非常に重要な役割を担っています。市場の変化が加速するなかで、「技術起点」の営業からお客様の声や市場動向を起点として製品開発にフィードバックする「マーケット起点」の営業へと転換していく必要があります。キャラバン活動の強化はその一環ですが、技術者同行による顧客訪問だけでなく、各地域のマーケット情報を体系的に収集・分析する仕組みの構築を進めます。
 お客様の困りごとを解決するのは簡単ではなく、難しい課題に挑戦し続ける必要があります。若手の社員には、難しくても挑戦を続けることが自分の成長、新たな価値の創出につながっていくと伝えています。失敗しても挑戦できる風土をさらに醸成していきたいと考えています。
 ガバナンスの強化に向けては、取締役会は監督を中心として、執行は執行役員へ権限移譲し、モニタリングモデルへの移行を進めることにより意思決定のスピードを上げ、外部環境の変化への迅速な対応を図っています。モニタリングモデルの実効性を高めるために、必要に応じて担当執行役員が取締役会に同席し、事業の現場感を反映した議論ができる体制を整備しています。社外取締役による拠点訪問も定例化し、現場の声を経営に反映する仕組みを強化しています。また、2026年6月より取締役7名のうち社外取締役を4名として、社外取締役比率は57.1%となりました。

次期中期経営計画における本格的な成長フェーズに向けて
■サステナビリティへの取り組みは着実に進捗

 環境対応においては、CO2の削減に向けて、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの活用、太陽光PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)や非化石電力導入などの取り組みに注力しています。2013年度比で2030年度に50%以上削減することを目標に掲げており、2024年度は43%削減、2025年度は48%削減で、目標に向けて順調に進捗しています。加えて、経営陣の覚悟として2026年度中にSBT(Science Based Target:温室効果ガス削減目標)認定を取得することをめざしています。
 また、社内においては、環境配慮製品の中から優れた製品や取り組みをエコエクセレンスとして認定・表彰する制度を設けています。現在は基準を見直し、技術の方向性や可能性も評価対象にして活動の活性化を図っています。

President

代表取締役 取締役社長 中村 啓次

■ステークホルダーの皆様へ

 当社はこの2年間で私たちの強みを活かせるアナログコア事業群に集中することを明確にしました。そのなかで、小型電池領域のフロントランナーとなることを目標とし、不採算事業の整理、M&Aによる規模拡大、全固体電池の収益化、そしてマーケット起点への営業変革を進めています。成長事業は概ね計画どおりに進んでおり、次期中期経営計画における成長の実現も見据え、MEX26における取り組みをさらに加速していきます。特に成長余地が大きい小型電池に引き続き積極投資を行うとともに、株主の皆様への還元も両立することで、企業価値の向上をめざします。
引き続き、マクセルグループへのご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2026年9月 「統合報告書 2026」より