「統合報告書 2024」より
取締役会の実効性向上と、事業部を越えた議論の活性化
- 相神:
- 取締役会は、企業価値向上と成長戦略についての議論に重点を置くようにシフトし、細かい業務執行面は執行側へ権限委譲して経営会議で行うようになりました。また、執行役員制度も充実してきました。
中村社長には、われわれ社外取締役から、中長期の企業価値向上に向けた議論をさらに充実させたいとお願いし、取締役会を終えた後、自由に議論する時間を設けていただきました。
今後の成長戦略について忌憚なく意見交換しており、中身の濃い議論ができるようになりました。
- 村瀬:
- そうですね。
以前から取締役会では活発に経営に関する意見交換がなされていましたが、取締役会以外の場でも、MEX26の
目標、2030年の目標に向けた取り組みなど、中長期的なテーマに関する議論が充実していると思います。
- 秦:
- お二人に同感です。この2年間で執行役員体制を整備、執行役員も増員したので、経営会議では皆さんに、
自部門のことだけでなく全社目線で議論し、見識を発揮してほしいと思います。
- 相神:
- 中村社長には、発言していない人を指名してでも意見が出るようにしてほしいとお願いしてきました。
現在は、忌憚のない活発な議論ができるようになってきたと聞いています。
- 中村:
- 経営会議では参加者の皆さんに発言を促しています。かつては、自分が担当している事業がうまくいっていないと他のことには口を出しづらい、まず自分の部門をしっかりしないと、といった意識が強く、全社最適な議論がされにくい面がありました。しかし今では、開発や営業といった組織が横ぐしになったことなども功を奏したのか、少しずつ改善されてきていると感じます。
人財交流など、アクションプランを着実に実行するためのKPIを再設定
- 秦:
- MEX26の策定にあたっては、早い時期から社外取締役も参加し、約1年にわたり議論しました。マテリアリティについては今年度、これまでの進捗を踏まえて、今後どのように取り組むのかについて議論し、アクションプランのなかでKPI・KGIが定まっていないものがあったため、これを見直し明確化しました。深く練りこまれた施策が定まることで、社員は自分たちがめざすこと、やるべきことがわかり、会社全体の実行力が向上します。
- 相神:
- 複数のマテリアリティに関わることとして、事業間のシナジーや社員のエンゲージメントを高めるために事業部間の人財交流や異動について実行力を持って進める必要があると社外取締役から提言していましたが、着実に実行され、会社の活性化につながっていると思います。
一方で、秦さんもおっしゃる通り、KPI・KGIのなかで十分にレビューされていないものが一部ありました。
例えば、マテリアリティの一つに「価値を生み出す人・組織づくり」を掲げていますが、アクションプランが十分に実行されていないと感じましたので見直しました。
- 村瀬:
- 今年度は、KPIの改定に加えて、KGIを新たに設定することにより、2030年に向かってマクセルがめざす姿を明確にしました。新たなKGIの中には女性管理職比率に関するものもあります。人財の多様性を促進することは、
マクセルの幅広い事業の活性化につながると期待しています。
- 秦:
- マクセルの事業分野は幅広く、組み合わさることでさらに強みが発揮されるので、人財ローテーションは重要です。職場を異動すると最初は苦労しますが、その苦労を経て成長し、各部門の違いと強みを理解してお客様の困りごとを解決できる提案力をつけてほしいと思います。
- 中村:
- はい。KPIは最終的なゴールとのつながりが弱いものもあり、MEX26では、その先の2030年にありたき姿を定量化し、そこからKPIにつなげていくよう見直しました。進捗状況について今後もしっかりチェックし、遅れているものについては改善していきたいと考えています。
MEX26の着実な推進に向けて
- 相神:
- MEX26の策定にあたっては、各事業部によるSWOT分析を踏まえて、議論を深めました。各事業部の現状認識も、より鮮明になったと思います。一方で、中長期的な成長戦略に関する議論の時間が十分にとれたとは言い難く、今後も事業間のシナジー創出に向けた人財交流の活性化や他社との協業、M&Aなど、中長期的な取り組みへの議論を続けていきたいと思います。
- 中村:
- 外部環境として市場、お客様、競合の動向を深く分析し、その中で自分たちの強みをどのように発揮していくのか、目標をどのように達成していくのかといったことを、前回よりも時間をかけて議論できました。
M&Aや外部との連携については、相神さんがおっしゃるとおり十分に時間をとれなかったため、計画の進捗を共有しながら、引き続き議論していく必要があると考えます。実際、外部とのアライアンスについてはさまざまな提案があがってきており、過去のM&Aやアライアンスを通じて得た知見を活かして、シナジーの創出に向けて検討を進めていきます。
- 村瀬:
- MEX26策定時は、各事業部のリーダーが一堂に集まり、他部門の事業環境や方針についての発表も一緒に聞き、お互いの状況を把握しながら理解を深めることができたと思います。とくにMEX23で目標を達成できなかった原因については何度も議論を重ねました。その分析も踏まえ、MEX26では、着実な成長に向けて当社の強みをどのように活かしていくか、事業の入替をどのように進めていくかといった大きな施策について議論しています。
また、弱みについて、克服するのか見切りをつけるのか、向き合うこともポイントになりますね。
- 秦:
- MEX23では、成長への実行力が不足している部分がありましたから、MEX26では定めた成長事業で重点的に投資を実施する計画になっています。成長戦略の推進力を高めるには、イノベーションが生まれる土台作りが重要です。イノベーションは、市場の本当のニーズを見抜く力と自分たちの強みを、独自の発想で組み合わせることによって実現できます。そのためには、中村社長が常々言われているように、エンジニアが市場に出て、お客様のニーズをしっかり理解することが重要です。また、マクセルのどこにどのような強みがあるのかを知るためにも、やはり人財のローテーションが必要です。
自分の部門の強みだけでなく他事業の強みも知ることで、お客様の要望に応えられるようになります。
- 相神:
- 次世代リーダーの育成も重要です。現在の取締役、執行役員は50代が中心ですが、40代で経営意識をしっかり持った優秀な人財がグループ会社や海外販売会社の社長、工場長などにも多くいます。私は、彼らが今後のマクセルを牽引する大きな力になると確信しており、経営会議にオブザーバーとして出席するなど、意見する場をつくると会社はさらに活性化すると思います。
- 村瀬:
- 人財のローテーションを通じて社員が多様な事業を経験することは、リーダーとしての力量アップにもつながりますね。マクセルは独自のアナログコア技術をベースとした幅広い事業を展開していることが強みの一つなので、さまざまな事業を経験することにより、マクセルの強みを活かした経営を担う力がつくと思います。
- 中村:
- MEX23の期間、まず事業部ごとにあった機能を横ぐしでつなぎ、事業部間、人と人の横のつながりが強くなるようにしました。例えば、製造部長を工場・事業部にまたがってローテーションしました。そして2022年には、全社で40代の社員を中心に選抜した「ステップ26」プロジェクトを実施し、2024年以降の中期経営計画を策定してもらいました。そこでできた人脈は、今後、事業部をまたがった交流の土壌になったと思います。
引き続き、横の交流を活性化できるように、取り組んでいきたいと考えています。
MEX26は飛躍の期間。「ワンマクセル」で2030年目標を達成
- 秦:
- MEX26の狙いや施策、経営の考えを、社長、役員、部門長からしっかりと伝え、浸透させることによって一人ひとりの力が発揮されます。それが会社の実行力となり、本人の成長やモチベーション向上、エンゲージメント向上にもつながります。そうした組織内の縦のコミュニケーションによってワンマクセルという意識が醸成されているのを肌で感じますが、一方でマクセル本体とグループ会社のつながりは、まだ弱いと感じます。
グループ会社一体で同じ方向に向かうことが大事です。
- 相神:
- マクセルは真面目で責任感の強い人、慎重に行動する人が多い印象でしたが、IP部門や新事業開発部門の方々には、しぶとさ、泥臭さそして貪欲さを感じます。そういう人たちに責任と機会を与え、横ぐし組織を通じて横の
コミュニケーションも活性化すれば、将来活躍するリーダーが育つと思います。
- 村瀬:
- MEX23期間の業績推移だけみると成長していないかのような印象ですが、中身は大きく変わってきています。強化された基盤のもとMEX26は2030年に向けて伸びていくフェーズですね。成長を促すマクセルの強みとして、お客様からの要望で設定されたテーマを達成する力は群を抜いていると思います。ただ、技術力だけが高まり、社会のニーズに合致しているのか、少しずれがあるのではないかと感じる時があります。
お客様の潜在的なニーズに切り込んだソリューションを提案し、新たな価値を生み出していくことが、2030年に向けた成長につながると思います。
- 中村:
- 技術的難易度が非常に高かった全固体電池は、私の想像を超えて開発が進みました。お客様からも評価され、期待されていることで、携わっている社員たちも自信をつけ、前向きに取り組んでいます。挑戦して高いハードルを乗り越えた成功事例として、全社員のモチベーションにつながることを期待しています。こうして難題にも挑戦する風土を醸成し、マクセルグループが一体となって、目標に向かって着実に成長できるように取り組んでいきたいと思います。