財務統括役員メッセージ

「統合報告書 2024」より

2023年度の振り返り

 前中期経営計画MEX23(Maximum Excellence 2023)の最終年度の2023年度の売上高は、国内コンシューマー製品販売事業の移管による減収に加え、二次電池や半導体関連製品の販売減などにより、前期比2.7%減の1,291億円となりました。一方、営業利益は、構造改革で国内コンシューマー製品販売事業を移管したことによる固定費の削減や成長事業の伸長により、前期比43.4%増の81億円となりました。
 営業利益については、新型コロナウィルス感染症拡大の長期化などに伴う経済環境変化による需要減、及び原材料や電動力費の高騰による原価増の影響から、2022年度決算発表時に、MEX23最終年度の計画値を125億円から75億円へ引き下げましたが、その目標についてはやり切ることができました。また、ROEは8.5%となり、当社の歴史において高い水準となりましたが、これに満足することなく、さらなる向上をめざします。

KPI
MEX26の目標達成に向けて

 2024年度にスタートした新中期経営計画MEX26(Maximum Excellence 2026)では、最終年度となる2026年度の目標として、売上高1,500億円、営業利益120億円、ROE10.0%を掲げました。
 利益向上に向けては、管理手法をブラッシュアップしながら引き続き、ABC-XYZオペレーション(事業別損益管理)、PIPJ(機種別損益改善プロジェクト)を着実に推進していきます。ABC-XYZオペレーションは、すべての事業群を売上高成長率と営業利益率によりランク分けし、ランクに応じた事業戦略を効率よく進めることにより、事業ポートフォリオの新陳代謝を加速していきます。成長性と収益性の高い「リソース集中事業(A,B)」比率の拡大に向けて、何が成長事業か、成長事業にすべきもので何が成長していないのかを見極めた上で、取り組みを進めていきます。MEX23ではA、B事業売上高比率50%超をマテリアリティのKPIとしていましたが、高収益を維持している事業でも、外的要因も含めたさまざまな要因で売上成長性が昨年に比べて鈍化した事業もあり、2023年度の実績は32%と未達で終わりました。このように短期的な成長に基づくランク分けは収益重視のポートフォリオ改革の判断を誤らせるリスクも内包するため、MEX26では中期的な成長を見極めることと致しました。この基準では2023年度のA、B事業の構成比は60%となります。
 PIPJは、5,000~6,000に及ぶ機種別の損益管理で、各事業本部、各関連会社で、営業利益率10%以上を目標として取り組んできましたが、より現場がわかりやすいようにグロスプロフィット(売上高総利益率)での管理に変更し、30%以上を目標としています。不採算機種の削減とともに採算の取れている機種のさらなる収益改善に向けたアクションも進めており、利益の積み上げに貢献しています。
 ROIC(投下資本利益率)については、2023年度の5.0%から改善を図り、2026年度には、当社の投下資本に対するコスト(WACC:加重平均資本コスト)6%を上回るROIC7.5%とすることをめざします。バランスシートは、在庫や固定資産の適正化に向けて、運転資本(CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善、投資モニタリングに引き続き取り組んでいきます。CCC短縮に向けては、在庫の適正化などにより運転資本を改善していきます。また、コロナ禍においては不測の事態に備えて厚めに持っていた在庫も適正化を進めてスリムになっており、今後は棚卸資産の削減によりキャッシュフローも改善していきます。
 投資モニタリングにおいては、1億円以上の新規投資について、投資委員会で収益性を精査しています。技術・マーケティング・調達・環境・財務・法務・知的財産の各担当がそれぞれの知見から精査し、企業価値向上につながることを判断基準に、投資すべきか否かを見極め、審議を通った案件が、経営会議、取締役会に付議されます。投資後は、四半期ごとにモニタリングを実施し、進捗をチェックしています。MEX23においては、粘着テープ、塗布型セパレータへの重点投資や、半導体製造装置向け事業への設備投資などを実施しましたが、これらの事業の中長期の成長戦略をしっかり示すとともに、着実に収益に結びつけていくのが私の使命であると考えています。
 自己資本比率は、2023年度末において54.9%となりましたが、50%前後を目安としています。また、D/Eレシオは足元では0.1~0.2で推移していますが、0.2~0.5を目安として運用していきたいと考えています。

MEX26におけるキャッシュアロケーション

 MEX26におけるキャッシュアロケーションについては、営業活動によるキャッシュフロー400億円(3年間累計)と、手元現預金、最適資本構成を踏まえた有利子負債を、成長投資と株主還元に振り向けていくことを計画しています。MEX26では具体的な事業成長のシナリオを描けたことを踏まえ、収益性向上と資本効率向上の両輪で取り組みを加速できると考えています。
 最も注力する成長投資は、MEX23の2倍超となる約350億円を計画しています。MEX23では投資額が計画に届きませんでしたが、MEX26では主に2027年度以降の売上にも直結する投資を中心として、成長事業の設備投資で約200億円、新規事業開発、アライアンスを視野に入れた投資で約100億円、人財強化やDXなど経営基盤の強化に約50億円の投資を見込んでいます。積極的な成長投資により収益成長を実現するとともに、株主還元の強化により資本効率の向上を図り、PBR1.0倍超の実現をめざします。MEX26における株主還元方針を「総還元性向100%以上」として、自己株式取得、安定配当を実施していきます。

キャッシュアロケーションの考え方
経営基盤の強化に向けて

 収益成長、資本効率向上に向けた取り組みの着実な推進に向けて、人的資本、DX、知的財産の強化、サステナビリティ経営の推進といった経営基盤の強化にも注力していきます。そのなかで、人的資本の強化を最重要課題と位置付けており、社員一人ひとりの個の力を高め、そしてチームとしてまとまって新しい課題に挑戦する組織風土を醸成していきます。多様な人財の育成・獲得、適切な人財配置、社員の経営への参画意識向上に、継続して取り組んでいきます。また、2020年度に実施した構造改革により人員の最適化を図った一方で、先行投資として成長分野における人財を重点的に強化していきます。
 人的資本に関連するKPIのひとつに、従業員意識調査での仕事のやりがい度の向上90%以上という高い目標を掲げていますが、これは取締役会での議論を経て、経営の強い意思を示したものです。調査結果を踏まえて改善に取り組み、エンゲージメントを高めていきたいと考えています。DXへの取り組みについては、MEX23では、各事業・各社の基幹システムを整備し、販売・調達・生産・会計などの情報を一元的に収集・管理できる環境を構築し、情報を一元化しました。

MEX26では、業務・生産・意思決定の領域における各種課題解決のための革新を実現し、働き方改革やAI活用の検討を含めた労働生産性の向上を加速していきます。
 知的財産については、専門部署で取り組んでおり、収益に結びつけられているものが多くあります。MEX23では、知財価値を最大化するサイクルを強化し、次世代特許群構築に向けた仕組みづくりに着手しました。MEX26では、中長期で収益貢献できる特許群の構築に向けて、知財における人財・組織を拡充し、取り組みをさらに強化していきます。
 MEX26のスタートにあたり、コーポレート・コミュニケーション本部に属していたサステナビリティ推進部を、社長直轄のサステナビリティ推進本部に組織変更しました。経済価値と社会価値の両立をめざして、カーボンニュートラル実現に向けた取り組み、マテリアリティ・KPIにおける取り組みを、協力会社とともに着実に推進し、上場会社としての責務を果たしていきます。引き続き、財務・非財務両面から、マクセルグループの体質強化に向けて取り組んでいきます。

メッセージ

2024年9月
取締役
増田 憲俊

経営基盤ごとのMEX26での活動のポイント

経営基盤 MEX26での活動のポイント
人的資本 人的資本の強化のため、「一人ひとりの長所を伸ばし」「チームとして仕事をし」
「難しい課題に挑戦する」ための各施策に対して優先的に投資し、実行
知的財産 知財の人財・組織力を強化すると同時に、取り組みをさらに進化・深化させ、
中長期で収益貢献できる特許群を構築
DX MEX23で共通化した基幹システムを土台にDX化を進化させ、業務・生産・意思決定の領域に
おける各種課題解決のための革新を実現し、働き方改革や労働生産性向上を加速
サステナビリティ経営 経済価値と社会価値の両立を視野に、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの加速と、
マテリアリティ・KPIの着実なアクション実行により、持続的成長を実現