積極的な成長投資と
資本効率の追求により、
企業価値向上を実現します

取締役
増田 憲俊

財務・人事担当役員メッセージ
■2025年度の業績の振り返り

 中期経営計画MEX26 (Maximum Excellence 2026) の2年目となる2025年度の売上高は前年度比0.3%減の1,294億円、営業利益は同15.3%減の79億円となりました。売上高は前年度と同等の水準ですが、内容は変化しています。収益性が厳しかったことから2025年5月に生産を終了した角形リチウムイオン電池の売上が減少した一方、成長事業のなかで一次電池、粘着テープ、塗布型セパレータなどの販売が増加しました。営業利益の減少は、主力製品である電池の主要材料である銀などの原材料価格の高騰の影響が大きく、11億円の減益要因となっています。
 一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、角形リチウムイオン電池の中国工場の売却益などにより、前年度比102.0%増の83億円となり、2014年の再上場以来、最高益を更新しました。これは事業ポートフォリオ改革の成果が財務数値として結実したものであり、不採算事業の整理が収益構造の改善に直結することを示しています。
 ROICは前年度より1.2ポイント低下し4.6%、ROEは同4.9ポイント改善し9.3%となりました。MEX26における最終年度目標として掲げているROIC7.5%、ROE10%の達成はさらなる努力が必要ですが、引き続き「利益成長」と「資本効率の向上」の二つを同時に推進していきます。

■業績管理のオペレーションについて

収益力の強化に向けては、ABC-XYZ管理(事業別損益管理)、PIPJ管理(機種別損益改善プロジェクト)を引き続き実施しています。

アクションプラン
市場成長・事業収益の2軸(ABC-XYZ管理)による、継続的な事業ポートフォリオ改善
 KPI  AB事業比率75%以上(2026年度)
 *収益率・成長性が高い「リソース集中事業」

 ABC-XYZ管理では、事業区分ごとに、成長性と収益性の二軸により、何を伸ばし何を縮小するか、将来に向けてリソースを投じるべきかを判断します。電池事業の拡大に向けて村田製作所様から一次電池事業を譲り受けたことや、収益性が低かった角形リチウムイオン電池の生産終了、EF2(電鋳製品)事業の売却といった判断は、このオペレーションをもとに行われています。
 PIPJでは、さらに細分化した機種別損益を管理しており、黒字機種の拡大および赤字機種の削減により、利益の創出を図ります。2025年度はシステム化が大きく進展し、機種別損益をタイムリーに算出できるようになりました。原材料費の高騰を販売価格に反映できているかなど、何ができていて何ができていないかが即座に可視化され、PDCAのスピードが格段に上がっています。この進化は、2025年度で最も大きな成果の一つです。
 当社グループにとって重要な原材料である銀が高騰していますが、生産数量を確保することを優先事項としつつ、適切な価格での調達を模索しています。銀は市況の影響を大きく受けるものでありお客様にもその点はご理解いただいています。PIPJの情報を活用し、価格反映の進捗を機種単位でモニタリングすることで、コスト上昇分の回収を着実に進めています。

MEX26初年度の実績と2025年度業績予想
■財務戦略の進捗

 CFOとして最も重要視しているのは、成長投資と株主還元を高い水準で両立させることです。
 成長投資はMEX26期間に約350億円を計画しており、前中期経営計画の約2倍の規模です。このうちエネルギーセグメントに約200億円を集中配分し、その他、機能性部材料をはじめとする成長事業にも投資を進めています。2025年度における投資キャッシュフロー150億円のうち74億円は村田製作所様からの一次電池事業の譲受に充てました。
 投資の回収については、一次電池の増産投資は製造ラインの稼働開始とともに売上・収益に直結するものであり、早期のリターンが見込めます。全固体電池への投資は、次期中期経営計画期間での本格的な収益貢献を見込んでいます。開発投資の規模は大きいですが、回収の時間軸を明確にして積極的に投資をしていきます。

株主還元の推移

 株主還元については、MEX26期間での総還元性向100%以上を掲げ、資本効率の最大化を図っています。2025年度においては、自己株式を132億円取得し、取得株式は2026年5月に全数を消却しました。内部留保を積み上げるのではなく、成長投資と株主還元に「積極果断に使う」ことが、当社の資本政策の基本方針です。
 キャッシュインについては、営業キャッシュフロー270億円以上に加え、200億円以上の借入により確保する計画です。株主資本コストよりも借入コストの方が低いため、適切な財務レバレッジを効かせることで資本コストの引き下げを図ります。このバランスを常に注視しながら、財務の健全性と成長投資の両立を実現しています。

キャッシュイン キャッシュアウト 成長のメインドライバー
■経営基盤の強化に向けた取り組みの進捗

人的資本の強化につい
 2025年度に実施した従業員意識調査では、エンゲージメントのスコアが66%から69%へ向上しました。3ポイントの改善は外部の専門家からも「相当大きい」と評価されており、施策を打てば組織が応える会社であることが確認できました。キャリア面談を100%実施したことで、経営陣の考えが従業員に伝わり、相互理解が深まっていると捉えています。今後は、対話の質の向上を図っていきたいと考えています。
 また、シニア層の再雇用制度について処遇を改善したことも、パフォーマンス、エンゲージメントの向上につながっています。福利厚生に対する従業員の満足度も高まっています。
 採用活動においては、キャリア採用を強化しており、2025年度は約80名を採用、2026年度も50名程度の採用を計画しています。技術系は専門性、事務系は経験値を重視し、すべての領域で即戦力となる人財の採用を進めています。新卒採用を上回る規模のキャリア採用は、当社の変革のスピードを支える重要な施策です。
 DE&I活動においては、女性管理職比率を2030年度に10%とすることを目標に掲げ、継続して取り組んでいます。男性育休取得率は100%となっています。周囲の理解があって初めて実現するものであり、組織として理解が進んできたものと捉えています。

DXの進捗
 基幹システムについては、国内でグループ会社を含め統合作業を完了しました。新たにグループに加わったマクセルサクラについても、今後同じシステムに統合していく予定です。海外においては、中国は制度上個別のパッケージシステムとなっていますが、それ以外の地域では統一され、グループガバナンスが強化されています。
 また、生成AIの活用も広がっており、業務の効率化が進むことにより、社員は思考・創造に関する業務に時間を充てることができるようになっています。導入前との比較では、時間削減効果は大きく、業務品質の向上にも寄与しています。

知的財産の強化
 マテリアリティの一つに掲げる「独創技術によるイノベーション創出」に向けて、次世代開発技術に関する特許資産の拡充を継続しています。知財・イノベーション本部の体制強化のもと、中長期にわたり収益に貢献できる特許群の構築を進めており、特許出願数は増加基調を維持しています。

■株主・投資家の皆様へ

 現在、当社のPBRは1倍前後の水準となっています。継続的にPBR 1倍超の実現、企業価値の最大化に向けて、利益成長と資本効率の向上に取り組んでいきます。PBR改善のドライバーは明確です。

財務・人事担当役員メッセージ

取締役 増田 憲俊

第一に、小型電池事業を中心とした成長投資による利益の拡大。第二に、ポートフォリオの入れ替えと資本効率の向上によるROICの改善。第三に、総還元性向100%以上のコミットメントによる株主還元の継続です。この三つを確実に実行することで、市場からの評価を高めていきます。
 MEX26は最終年度を迎えましたが、ポートフォリオ改革、財務戦略、ガバナンスの三本柱における取り組みを引き続き推進していきます。ガバナンスについては、社外取締役比率を引き上げ、取締役会をモニタリングモデルへシフトし、実効性をさらに強化します。
 2025年度の従業員意識調査でのエンゲージメント向上が示すように、施策を打てば組織が応える力を持った会社です。この「変化への対応力」を武器に、MEX26の目標達成と、その先の持続的な企業価値向上を実現してまいります。

2026年9月 「統合報告書 2026」より