鼎談 M&Aによる事業統合
─マイクロ電池のマクセルへ

執行役員 エナジー事業本部長 マクセルサクラ 取締役 木村 孝史 / マクセルサクラ 代表取締役社長 長谷川 幸生 / マクセルサクラ 取締役 (元村田製作所) 桑名 泰弘
マクセルサクラ・小野事業所を活用し、フレキシブルな生産体制の構築により実供給能力・売上を拡大

マクセルは2026年3月、株式会社村田製作所及び株式会社東北村田製作所が営んでいた一次電池事業を譲受し、新会社「マクセルサクラ株式会社」を子会社化し、事業を開始しました。同社の社長、取締役に就任した長谷川、桑名、木村の3名で座談会を実施し、このM&Aの背景と現状、今後の展望について語り合いました。

今回のM&Aの背景と期待するシナジー

木村当社と東北村田製作所は同じ電池市場で事業を展開していましたが、設計思想や強みが異なっていました。今回のM&Aにおいては、お互いの技術やノウハウを組み合わせることで、これまで単独では実現できなかった価値をお客様に提供できると考えました。また、統合することによって成長スピードを加速し、市場の成長機会を確実に取り込めるようになることも決め手でした。

長谷川2026年3月会社設立初日の朝一のミーティングで、「競合から最強へ」という言葉を1枚のスライドに映し出したところ、従業員から大きな反響がありました。両社はこれまでライバルでしたが、切磋琢磨してきたことで、各領域でそれぞれが世界トップクラスとなっています。これからはひとつのチームとしてさらに強くなっていくというメッセージが、多くの従業員の共感を得たのだと思います。今後どのような化学反応が起こるか、私自身非常に楽しみです。

マクセルサクラのビジョンは、「技術・人・知見の結集による価値創造への挑戦」としました。新会社となって、一番驚いているのは、日々建設的な対話が行われ、想像以上に相互理解が進んでいることです。長年にわたり切磋琢磨してきた関係だからこそ、それぞれが培ってきた経験や知見、モノづくりへの自負を背景に、高信頼の小型電池領域のフロントランナーをめざす上で、我々がどうあるべきかについて議論が尽きません。

また、両社とも海外販売比率が高いのですが、承継した顧客で重複したアカウントや既存ルートと競合するケースが少なかった点は大きなプラス要素でした。マクセルの強みは、海外拠点ごとに電池のエンジニアが駐在しており、現地のセールスが電池に関する高い知見を持っていることです。今回、販売ルートがさらに広がったことに加え、シナジーを最大限に活かすことで、これまで以上に幅広いお客様の課題解決につながるソリューションを提供できると思います。両社はシナジーの早期刈り取りに向けて、さらにスピーディーに取り組みを推進していけると期待しています。

桑名東北村田製作所のモノづくりの特長は「変種変量」で、小回りを利かせ、新しい設備の導入、生産品目の切り替えといったことを、他社よりも素早くできることが強みです。この強みがマクセルにも受け継がれると、グループ全体のフレキシビリティを高めることができると考えます。

今後、最も大事なのは、長期的にシナジーを生むことです。人、知見、技術を結集し、両社のモノづくりにおける物の見方や考え方の多様性を活かしながら、それぞれで考えていたことを融合させ、イノベーションを起こし、競争力を高めていきたいと思います。

ソニーから村田製作所へのM&Aの時に、融合するためには何が大切かを学んだ人が大勢いますので、経験を活かすことができると思います。

マクセルサクラ 取締役 (元村田製作所) 桑名 泰弘
マクセルサクラでの業務シーン
マクセルサクラでの業務シーン
マクセルサクラでの業務シーン
マクセルサクラでの業務シーン
マクセルサクラでの業務シーン

シナジーの創出へ、両事業所の交流を加速して「人」を融合

執行役員 エナジー事業本部長 マクセルサクラ 取締役 木村 孝史

木村郡山事業所の人たちは今回が2回目の統合ということで冷静に全体を見ており、小野事業所の人たちは初めての経験であるため、目先のことも含めて、さまざまなことに追われている感じがします。

執行役員 エナジー事業本部長 マクセルサクラ 取締役 木村 孝史

桑名M&Aに関する説明会の1日目に、マクセルの皆さんと話しましたが、お互いにリスペクトし、押し付け合いもなく、非常に良いスタートを切れていると思います。技術を融合するには人の融合が大事であり、本格的に交流を加速させたいと考えています。

木村私はもともと技術者でしたが、今後、世界的にも技術力の高い両社が融合することで、オンリーワンとなる製品を生み出していけると考えています。今、技術者の皆さんが取り組み始めていることが、お客様の次代に向けた商品開発につながる技術・製品となっていくことを期待しています。

長谷川技術者同士で話すと、どうしてもシーズに関することになってしまい、それも非常に大切なことですが、マーケットからのニーズを踏まえた価値創造の機会を増やせば、さまざまなオプションも出てくる可能性があります。今後はひとつのビジョンのもと、人財の連携や知見の結集、技術の強化を進める一方、マーケットドリブンの発想で、マーケットで得たイシューや課題を解決する製品開発を推進していきますが、その点で工場の役割は非常に大きい。小野と郡山両事業所で考えうる解決策が倍になり、取り組みのスピードも速くなり、お客様への提案も増え、その強さは計り知れないものになると思います。

既存領域と全固体電池領域、それ以外の領域にも全方位で対応できる強みを活かし、今回新たに公表した宇宙分野の開発など、これまで進出していないマーケットにも展開していきたいと考えており、営業部門の従業員のモチベーションも高まっています。

木村今回のM&Aは事前にしっかり準備を進めてきたことに加え、最終的には桑名さんに郡山事業所の皆さんの方向性を統一していただいたことが大きいと思います。蓋を開けてみると、お互いにある程度ベクトルが揃っており、モノづくりに対する考え方や姿勢が真面目で、企業文化も似ている印象があります。

桑名これまでは、マイクロ電池は会社の本業ではない一事業という位置づけでしたが、マクセルにおいては中核事業となります。責任もその分大きくなりますが、自分たちの成功がマクセルの成長につながることに全従業員が本当に喜んでおり、モチベーションが上がっています。

マクセルサクラ 代表取締役社長 長谷川 幸生

長谷川今回の譲渡では99.3%という非常に高い水準で従業員を承継しました。ハード面のシナジーについては、両社のお客様は異なっていることから新たな展開を期待できます。そして、それ以上に、ソフト面での「人の連携」によるシナジーが極めて大きいと考えており、楽しみにしています。マクセルサクラの社長として、それを特に強調してお伝えしたいと思います。

マクセルサクラ 代表取締役社長 長谷川 幸生