社外取締役 鼎談
成長に向けて人財の融合を進め、
マクセルグループの総合力を発揮することを期待します

取締役会の実効性について
- 相神:
- 私はマクセルの社外取締役として、会社に対する責任と第三者に対する責任を負う立場にあります。相当な覚悟を持って取締役会に臨んでおり、経営陣の意思決定に対しても自分の経験を踏まえ、おかしいと思うことがあれば毅然と意見するように努めています。そして、取締役会で審議すべき議題があれば、社外取締役から提案することも厭わない考えです。 
 このような姿勢で臨むためには現場の動向をしっかり把握することが必要であり、監査等委員としてマクセルの各事業部やグループ会社のトップや部長、課長と定期的に面談して現場の声を聞くとともに、内部統制が機能しているかをチェックしています。
 取締役会では、社内取締役からも多くの意見が出るようになり、議論がより一層活発になりました。また、ステアリングコミッティーや取締役会後にも自由に議論する場があり、事業部の責任者と意見交換しています。引き続き、マクセルの進化に向けて執行側と問題点を共有し、その解決に向けて議論を重ねていきたいと考えています。
- 秦:
- 投資家から見たガバナンスという観点で言えば、マクセルは取締役会において社外取締役が過半数に満たないことを不安視されるかもしれませんが、社外役員がマジョリティを占める指名・報酬委員会を設置し、指名・報酬に関わる権限の移譲を進めています。 
 取締役会の実効性評価を毎年アンケート形式で実施し、評価結果に基づきPDCAサイクルを回していますが、実効性を高めるために最も重要なのは形式的なことではなく、自由に議論できる環境が整っていることです。マクセルは私たち社外取締役に情報を包み隠さず提供し、そのうえで議長である中村社長が発言しやすい雰囲気をつくっており、反対意見を含めて発言しやすい環境があり、中身の濃い議論が増えています。社内役員だけでは事業継続などに関して結論を出しづらいこともありますが、成長に向けてリスクを取りにいくように、私たちからプレッシャーをかけることも必要だと思っています。
- 村瀬:
- 秦さんがおっしゃった事業継続という点で、今後の成長が難しい事業から撤退し、筋肉質な体質への変革を進めた前中期経営計画MEX23を経て、MEX26では、成長分野へ積極的に投資していくステージへ移行しました。2030年に向けて、攻めるところとグリップするところを明確にし、ギアチェンジしていく大事な局面であり、新規事業の立ち上げが本格化するなかで、社外取締役の役割はますます重要になると認識しています。 
 社外の立場から全体を俯瞰して多角的な視点で、短期・長期の両面の観点から、意見していきたいと考えています。取締役会ではなかなか中長期的なテーマについて議論できなかったのですが、取締役戦略会議が新たに行われるようになり、当社の強みを発揮して中長期的にどのように価値を生み出していくかについて話し合う時間もできました。
成長に向けたマクセルの課題と期待
- 相神:
 
- マクセルが成長していくためには、MEX26で掲げたポートフォリオ改革の成否が重要なポイントとなります。新たな製品・サービスを生み出していくには、事業部間の人財交流と、他社との協業を積極的に進めることが重要です。事業部間の異動を通じて社員が融合することにより化学反応が起こる可能性があり、人財ローテーションを促すFA制度の導入を経営陣に提案しています。また、他社との協業については次第に成果が挙がっていますが、マーケティング部門や事業部がさらに積極的に他社へアプローチし、より多くのビジネスの種を探索していく必要があると思います。
- 秦:
- 人財のローテーションについては、社員一人ひとりが、まじめにこつこつと同じことを続けるだけでは成長しないということを認識するとともに、自己努力やローテーションを通じて新しい能力・知見を身に付け、自分を磨いてアウトプットを高める重要性をトップや事業責任者から社内に広く働きかけてほしいと思います。 
 主力事業を横断する営業統括本部が2021年に新設されましたが、まだ十分にシナジー効果が出せていません。相神さんがおっしゃる通り、外部との協業によるシナジーが必要であり、他社と接することで自社の強みを認識し、自分たちの価値が何かを改めて見つめ直すとともに、世の中のスピード感を感じ、それに遅れないようにすることが必要です。その意味でも2025年6月に発表した株式会社村田製作所からの一次電池事業の譲受が、当社の中核であるエネルギー事業の成長につながることを期待しています。過去のM&Aでは企業価値向上までに時間を要したのですが、今回は早期にシナジーを発揮して強みを伸ばしてほしいと思います。
- 村瀬:
 
- MEX26の策定にあたっては、世界のマーケットにおいて、どこでマクセルの強み、技術力を発揮できるか、成長ポテンシャルがあるかを見極めることに時間をかけて議論しました。その中で、成長分野のひとつとしたのが小型一次電池事業であり、今回の村田製作所とのM&Aを契機にギアチェンジして成長スピードを加速させることを期待しています。 
 現在、マクセルは積極的な成長投資を進める攻めのフェーズにありますが、タイミングを逃すことなく顧客ニーズに応えるためには、早い段階からお客様とのコミュニケーションを取りながら開発を進めていき、新事業の立ち上げ、生産ラインの増設などについてスピード感を持って判断しなければなりません。
- 秦:
- グループの一体化については、いまだ道半ばです。
 マクセル本体とグループ会社との関係も見直していく必要があります。
- 相神:
- そうですね。
 グループの総力を高めるためにどうするべきか、全社、個社、社員一人ひとりが考え、取り組むことが大切です。そしてグループ全体で人財の強化を図るためには、会社が社員に何を期待するのか、どのような狙いで人事制度や研修制度を運用しているかについて、担当役員から社員に説明する機会を設け、社員の意識向上、積極的な取り組みを促す必要があります。また、女性のリーダー育成にもより注力し、リーダー候補となる社員が「自分がやれば周りがサポートしてくれる」と思える雰囲気を作ってほしいと思います。
- 村瀬:
- 人財育成に向けた取り組みでは、社内研修に加えて外部講師による研修も実施し、また、若手社員にさまざまな経験を積んでもらう機会が全社的に増えています。台湾で開催されたセミコン台湾(半導体の見本市)を視察した際には、若手社員を含む多くの社員がお客様対応に尽力する姿を目の当たりにし、このような現場での経験を通じて人財を育成する方針が浸透し始めていると感じました。成長分野への投資、新規事業の立ち上げを推進するなかで、社員のモチベーションが一層高まり企業価値向上の原動力となることを期待しています。
- 秦:
 
- MEX26の各取り組みは着実に進捗していますが、ポートフォリオの大胆な改革のためには、人財を育て活かす経営の仕組みを構築することが急務です。過去に数々の大企業が陥った「真面目な社風が行き過ぎたがゆえの官僚化」は避けなくてはならず、そうならないように外部の人を受け入れる風土は残しておかないといけません。
- 村瀬:
- マクセルの各事業はアナログコア技術でつながっていますが、製品・技術の使われ方は多様で、幅広いお客様との取引があるため、ともすれば十分なシナジー効果が生まれにくい状況になりかねません。これをワンマクセルとして強みにしていくためには、アナログコア技術でつながっているお互いの事業への理解を深め、事業部門同士で意見が言い合える風土をつくることが重要であり、例えば経営会議では、自部門の事業を報告するだけでなく、他部門の事業についても意見するようになれば、お互いに新たな気付きを得ることができます。お客様に対してそれぞれの事業の強みである技術力を活かした提案を強化しシナジー効果をより高めていくことが、利益の拡大につながっていくと思います。
- 相神:
- 雰囲気は良くなってきています。これからさらにマクセルを発展させるには、今まで話したことを一つひとつ議論を重ねて行動に移すことが必要です。業績が改善し、資金力も高まっていますが、良い意味で「このままではいけない」と危機感を持ち、社員には高いモチベーションを発揮できる機会をより多く設けてほしいと思います。
2024年度の取締役会での検討内容
取締役会においては、中長期的な戦略的議論の深化に重点を置き、主に重要な事業戦略に関する事項(ポートフォリオ戦略など)、資本政策に関する事項(資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応、自己株式取得、剰余金の配当など)、サステナビリティに関する事項などについて議論を行いました。また、業務執行取締役の職務執行状況、内部統制システムの状況、株主等のステークホルダーとの対話の状況、後継者計画の実施状況等の報告を通じて、適切に職務執行を監督しました。
2024年度の指名・報酬委員会での検討内容
指名・報酬委員会においては、取締役会の諮問に基づき取締役の指名及び報酬などに関する事項について検討を行いました。
2024年度は、指名に関しては、取締役候補者の選任に加え、監督と執行のあるべき姿を見据えた役員体制の見直し、後継者育成方針、及び取締役会が備えるべきスキル項目について審議を行いました。また、報酬に関しては、各報酬(基本報酬、短期インセンティブ(賞与)、中長期インセンティブ(株式報酬))の構成割合の見直しや、2025年度の報酬額などについて審議しました。





