強固な
事業ポートフォリオの構築、
イノベーションを支える
経営基盤の強化に注力します

取締役
増田 憲俊

財務・人事担当役員メッセージ

「統合報告書 2025」より

2024年度の業績の振り返り

 中期経営計画MEX26 (Maximum Excellence 2026) の初年度2024年度の売上高は前年度比0.5%増の1,298億円、営業利益は、一次電池や塗布型セパレータ、健康・理美容製品の販売増、為替影響などにより同15.3%増の93億円となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、事業改革の結果、角形リチウムイオン電池の生産終了に伴う特別損失26億円を計上したことにより、同45.8%減の41億円となりました。営業利益目標を達成できたことは、これまで進めてきた事業ポートフォリオ改革により収益基盤が強化された成果が現れたものとして手応えを感じています。
 ABC-XYZオペレーション(事業別損益管理)では計算基準の見直しを行い、成長性と収益性の高い「リソース集中事業 (A,B)」の2024年度の比率は58%となりました。計画との乖離を3カ月単位でモニタリングしており、問題があれば早めに手を打っています。また、各事業本部、各関連会社でPIPJ(機種別損益改善プロジェクト)を推進していますが、2023年度から、実務者がよりわかりやすいように管理基準を営業利益率から売上高総利益率に変更しました。迅速な分析を経て、不採算機種の削減や採算の取れている機種もさらなる収益改善を図り、利益の積み上げに貢献しています。営業利益率10%以上の確保に向けて、販売管理費率は10%~20%を想定し、売上高総利益率は30%以上を目標としています。ROIC(投下資本利益率)は、前年度より0.8ポイント上昇し、5.8%となりました。
2026年度には、当社の投下資本に対するコスト(WACC:加重平均資本コスト)6%を上回る7.5%とすることをめざします。

アクションプラン
市場成長・事業収益の2軸(ABC-XYZ管理)による、継続的な事業ポートフォリオ改善
 KPI  AB事業*1 比率75%以上(2026年度)

MEX26初年度の実績と2025年度業績予想
MEX26における財務戦略の進捗

 営業利益は2023年度から2期連続で増益を続けており、2025年度に100億円、2026年度に120億円を達成する計画です。着実に利益成長のステップを踏んでいますが、2024年度のPBRは1.0倍未満であり、成長の蓋然性を高める必要があると考えます。積極的な成長投資の実行による収益成長と、株主還元強化による資本効率の向上により、PBR1.0倍超の実現をめざします。
 成長投資については、MEX26期間に、設備投資で約200億円、新規事業開発、アライアンスやM&Aを視野に入れた投資で約100億円、人財強化やDXなど経営基盤の強化に約50億円、合わせて約350億円を計画しています。設備投資は、2024年度で64億円を実施し、2025年度は85億円を予定しています。また、2025年度では約80億円で株式会社村田製作所から一次電池事業を譲受することも決定しており、計画通りに進捗しています。

株主還元額と自己資本比率の推移

 株主還元についてはMEX26期間での総還元性向100%以上を計画し、資本効率の最大化を図ります。2024年度においては、配当金総額は22億円で、自己株式の取得50億円と合わせて、総還元性向は180%超になりました。

経営基盤の強化に向けた取り組みの進捗

人的資本の強化:人財採用においては、近年は特に経験者のキャリア採用に注力しています。プロパー社員とキャリア採用社員の垣根はなく、融合が進み、良い企業文化が醸成されてきていると感じます。また、多様な人財の獲得に向けて、外国人、女性社員の採用も積極的に行っています。新卒採用においては、女性採用比率の目標として技術系で25%以上、事務・営業系で50%以上を掲げ、クリアしています。優秀な人財の獲得、社員のモチベーション向上に向けて、全体の給与水準の引き上げも進めていきます。
 また、人財を適正に配置するためタレントマネジメントシステムを構築するとともに、新たな領域の開拓に向けさまざまな技術スキルを持った人財が最大限に力を発揮できるよう、技術者スキルマップの作成を開始しました。スキルマップを活用し、引き続き人財の最適な配置、ローテーションを進めていきます。
 2030年に向けたKGIのひとつに、従業員満足度90%以上という高い目標を掲げていますが、これは取締役会での議論を経て、経営陣の強い意思を示したものです。2024年度における調査では満足度が向上しましたが、その要因として、キャリア面談を100%実施したことによりコミュニケーション、相互理解が深まったことがあると考えています。
 一方、女性管理職比率の向上に向けては2030年度に10%を目標に掲げて取り組んでいますが、2025年3月末時点で5.6%と徐々に上がってきているものの、目標達成にはさらなる施策が必要です。ダイバーシティ&インクルージョンの推進、育児休暇や育児短時間勤務など制度面のさらなる充実を図ります。

DXの強化:これまで進めてきた経営管理基盤(基幹システム)の統合については、2025年度に、国内グループ会社1社のシステム更新をもって完了する予定です。統合されたシステムのもと、ガバナンスの強化を図っていきます。
 2025年度は、幅広い業務のデジタル化、生成AIの活用を進め、働き方改革や労働生産性向上を加速するため、情報システム部門のもと、社員一人ひとりのITリテラシーの向上に注力します。各部門における生成AIの活用事例を集め、展開することにより、より多くの社員が学び、利用できるようにしていきます。

IPの強化に向けて:マテリアリティのひとつに掲げる「独創技術によるイノベーション創出」に向けて、2026年度までの5年間で次世代開発技術に関する特許資産数を1.5倍にすることをめざし、特許出願数は2021年度以降、増加しています。中長期にわたり収益に貢献できる特許群の構築に向けて、知財・イノベーション本部の人員を大幅に増やし、取り組みを進化・深化させています。

サステナビリティ経営の強化:サステナビリティへの取り組みに対する社会、取引先の関心が高まるなか、MEX26では、経済価値と社会価値の両立を見据え、各マテリアリティのアクションプランを着実に実行しています。2024年度の取り組みの例としては、まず2024年10月に「マクセルグループ人権方針」を改定しました。社内の意見聴取と社外有識者の助言も踏まえて、サプライチェーン全体の人権を尊重する内容としました。
 脱炭素化については、2030年度にCO2排出量を50%以上削減(2013年度比)、2050年度にカーボンニュートラルの達成を目標としており、2025年3月に、SBT (Science Based Targets) 認定取得に向けたコミットメントレターを提出しました。2年以内のSBTの認定取得をめざし、取り組みを進めていきます。
 グループガバナンスについては、執行役員が各事業部を統括する体制が整備され、グループ全体で改革の足並みが揃ってきました。
また、取締役会においては7名中3名が社外取締役という構成になり、その比率は42.9%となりました。

 米国の相互関税について、直接的な影響を受ける可能性のある米国での売上高は約15%の見通しで、中国で製造しアメリカへ輸出している製品については、関税の発動により一時的に出荷調整等も考えられますが、競合他社の状況や間接的な影響を踏まえ、今後の業績インパクトを注視していきます。対象製品については、お客様への丁寧な説明を通じて販売価格への反映を検討し、影響が長引く場合は、お客様との連携を含めサプライチェーンの再構築を検討していきます。
 MEX26の目標の達成に向けて、成長投資、ポートフォリオ改革、株主還元を確実に実行していきます。そして、マクセルのビジョン実現に向けた戦略を着実に推進し、継続して成果や課題を適時発信することによってステークホルダーの皆様との信頼関係を構築し、ご期待に応えてまいります。

財務・人事担当役員メッセージ

2025年9月
取締役
増田 憲俊

事業共通基盤の主要施策

事業共通の基盤 すべての事業の競争力を底上げする主な施策
人的資本 ・計画的なキャリア採用プロセスの強化により、多様な人財を獲得
・適正配置によるチーム力向上のために、タレントマネジメントシステム
を構築、技術者のスキルマップ作成開始など
DX ・経営管理基盤(基幹システム)統合の完遂に向けた最終フェーズ推進
・間接業務から営業業務、製造管理などにおける幅広い業務のデジタル化を推進
知的財産 ・知財創生・活用の土台となる人財を大幅に増強
・中長期での収益確保のための特許群を着々と構築中
サステナビリティ経営 ・脱炭素社会の達成をめざし、SBT (Science Based Targets) 認定取得
に向けたコミットメントレターを提出

(English)