燃料電池の高性能化を実現する高活性な新触媒を開発
〜白金よりも約4.8倍*1の酸素還元電流を実現〜
2008年3月27日
日立マクセル株式会社(執行役社長:角田 義人)は、燃料電池の電極に使用される酸素還元用触媒*2として、粒子サイズ2-3nm(ナノメートル)で白金よりも単位面積当たり約4.8倍*1の酸素還元電流を発生する、高活性な金白金(AuPt)触媒を合成する新技術を開発しました。
固体高分子型燃料電池*3は、クリーンエネルギーとして自動車用、家庭用電源、モバイル機器用の電源用途として期待されています。現在、固体高分子型燃料電池の酸素還元用触媒として、一般的には白金(Pt)が広く使用されています。しかし、白金は極めて高価な貴金属であり、燃料電池のコストを低減させるためには白金の触媒活性を一層向上させ、その使用量を極限まで抑えることが重要な研究開発課題の一つとされています。
触媒の活性を高めるためには、白金の粒子サイズをさらに微細化して表面積を増加させることが有効とされています。また、白金に鉄(Fe)やコバルト(Co)、ニッケル(Ni)を添加することにより酸素還元活性が高まることが報告されています*4。しかし、燃料電池の触媒が使用される電極付近は、極めて強い酸性の状態であり、酸に溶解しやすい鉄などの卑金属は発電中に溶解してしまう問題がありました。
今回マクセルが開発した触媒は、酸に溶けにくい金を白金に添加した材料です。金と白金は金属学的には合金を形成しにくい元素であり、また、一般的に金は大きい粒子に成長しやすい特性*5で、5nm以下のナノ粒子を合成することが困難でした。今回、当社がこれまで培ってきたナノ粒子合成技術を応用し、クエン酸を還元剤として100℃で金と小さい粒子になりやすい白金を合成することで粒子径が2-3nmと小さく、金と白金が十分に合金化していない構造の高活性な新触媒を開発することができました。この新触媒は、白金触媒に比べ単位面積当たり約4.8倍の酸素還元電流を実現しており、X線回折法で判明した金と白金が十分に合金化していない構造と微粒子化したことが酸素還元活性の向上に大きく寄与しているものと考えられます。
本成果により、大電流を必要とする自動車用、家庭用電源などの燃料電池の実用化へ大きく近づけることができました。なお、高活性な金白金触媒を合成する新技術については、3月28日、29日にタワーホール船堀(東京都江戸川区)で開催される第101回触媒討論会で発表する予定です。
マクセルは今後も、これらの要素技術をもとに、固体高分子型燃料電池および直接メタノール型燃料電池*6への応用をめざし、研究開発を進めていきます。
- *1 酸素ガスで飽和した35℃の硫酸水溶液中、回転ディスク電極法による単電池評価結果。水素電極を基準とし、酸素還元電流を触媒の単位面積で規格化した値。
- *2 陰極での酸素ガスを酸素イオンに変化させる化学反応において、反応の障壁の高さを低減させる働きがある。
- *3 電解質に固体高分子膜を使用した低温作動型の燃料電池。水素あるいは都市ガスなどから作った水素と、空気中の酸素を化学反応させ、電気エネルギーを取り出す燃料電池。
- *4 T. Toda, H. Igarashi, H. Uchida and M. Watanabe, J. Electrochem. Soc., 146, 3750 (1999).
- *5 一般に、融点の低い金属は大きな粒子に成長しやすく、融点の高い金属は小さい粒子を形成しやすい。金(Au)の融点は1064℃、白金(Pt)では1,770℃。
- *6 電解質に固体高分子膜を使用した低温作動型の燃料電池。陽極燃料にメタノールと水、陰極燃料に空気中の酸素を使用して発電させる。
主な特長
- 粒径2-3nmの金白金(AuPt)触媒を合成
これまで培ってきたナノ粒子合成技術を応用して、金(Au)と白金(Pt)からなる粒径2-3nm(ナノメートル)の金白金触媒を合成しました。
- 単位面積当たりの酸素還元電流が白金(Pt)触媒の4.8倍を実現
酸素還元電流の向上は、低い温度で金白金触媒を合成し、金と白金が十分に合金化していない触媒の構造と微粒子化したことが大きな鍵と考えています。一般的な白金触媒と比較し、単位面積当たり4.8倍の酸素還元電流を発生することができました。
導電性カーボン担体に担持した金白金(AuPt)触媒の電子顕微鏡写真
カーボン担体に担持させた金白金(AuPt)触媒の電子顕微鏡写真。黒色から灰色の粒子が金白金触媒、薄い灰色部は担体のカーボン。金白金触媒の粒径は2-3nmです。
市販白金(Pt)触媒との酸素還元活性の比較
同じ導電性カーボン担体(比表面積:800m2/g)に担持させた市販白金(Pt)触媒と金白金(AuPt)触媒の酸素還元活性を評価。酸素還元電流を触媒の単位表面積で規格化して比較。金白金触媒では、水素基準電位0.6Vにおいて市販Pt触媒4.8倍、0.8Vで約3.2倍の酸素還元電流を記録しました。
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